加齢黄斑変性とは
加齢黄斑変性とは、50歳以上、特に70歳以上の高齢者に多い黄斑疾患で、欧米では失明原因の第1位にあり、日本においても食事の欧米化も影響して、ここ10数年ほどで増加が目立つようになりました。
カメラに例えるとフィルムの役割をしている網膜の中心に位置する黄斑部が障害され、中心が見えにくくなり視力低下が進行します。一般的には、網膜の下にある脈絡膜という場所に生じた新生血管が網膜まで発達し、網膜に出血や浮腫など様々な変化を引き起こし、視力低下を起こす疾患です。
黄斑部は、視細胞が最も密に分布している場所なので、障害されると見たい場所の中心が暗く見えたり(中心暗点)、歪んで見えたり(変視症)して、視力が低下します。進行しても周辺の視野が保たれるので、かなりの重症にならない限りは真っ暗になることはないのですが、進行すると社会的失明に至ることがあるので早期発見・早期治療が大切です。
加齢黄斑変性を発症していなくても、前駆病変として注意が必要な眼底所見(軟性ドルーゼン・網膜色素上皮の異常など)もあります。
特に、50歳以上の方・喫煙者・紫外線暴露の多い方は一度、眼底検査を受けられることをおすすめします。
加齢黄斑変性の2つのタイプ
滲出型(ウエット型) 「新生血管型」 |
萎縮型(ドライ型) 「非滲出型」 |
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眼の中の変化 |
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患者様の割合 | 50歳以上の80人に1人(1.2%) 男性に多い(女性より3倍) |
50歳以上の0.1%が発症 |
病気が進む速さ | 速い | 遅い |
病気の経過 |
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※横スクロールで全体を表示します。
加齢黄斑変性の症状
黄斑部は網膜の中心部に位置し、ものを見るための重要な部分で視細胞が最も密に分布しているので、障害されると視力に大きく影響します。見たい場所の中心が暗く見えたり(中心暗点)、歪んで見えたり(変視症)して、視力が低下します。放置していると、視力0.1以下を下回ってしまうことがあります。進行しても周辺の視野が保たれるので、かなりの重症にならない限りは真っ暗になることはないのですが、進行すると社会的失明に至ることがあるので早期発見・早期治療が大切です。
また、片方の眼に発症して視力が低下したとしても、もう片方の眼でカバーすることで気づかないことも多く、そして片方の眼に発症するともう片方の眼にも発症するリスクが高くなるといわれています。
加齢黄斑変性の主な原因
加齢黄斑変性の原因はまだ明らかに解明されていません。最も大きな要因としては加齢が挙げられますが、食生活の欧米化やバランスの悪い食事、喫煙、紫外線、肥満、高血圧、脂質異常症、遺伝、なども挙げられます。その中でも喫煙と紫外線は、加齢黄斑変性の発症に重要な危険因子と考えられています。加齢に伴って網膜の代謝は悪くなると発症しやすくなるのですが、喫煙や紫外線による活性酸素などの酸化ストレスで更に発症のリスクは上がります。
そして、ビタミン・カロテン・亜鉛の不足などの栄養素も関係していることが示唆されています。
加齢黄斑変性の検査
加齢黄斑変性を精密に検査するには眼底検査や造影検査など特殊な検査が必要になります。
眼底検査
眼底検査では黄斑部網膜における異常(漿液性網膜剥離や出血、網膜の委縮、網膜浮腫などの所見)を観察することができます。
さらに、原因となる新生血管の有無や病変部の大きさや範囲、病変の活動性を確認するために蛍光眼底造影や光干渉断層計(OCT)を用いて、診断と治療方針を決定します。
光干渉断層計(OCT)
光干渉断層計(OCT)は網膜断層撮影の装置で、眼底にレーザー光を照射して反射して戻ってきた光の波から解析します。
高解像度のOCTangiography
当院で導入しているOCTは、通常のOCTでは撮影できない硝子体〜網膜〜脈絡膜までの撮影が可能であり、造影剤を使わずに血管撮影もできるので、造影剤の副作用などの心配もなく非侵襲的に短時間で検査を受けていただくことが可能です。
新生血管の有無や大きさ、形、深さまで詳細に確認でき、新生血管の位置を調べるのにも有効です。 検査は数分で完了し、造影剤の注射も必要ないので患者様に負担を掛けず検査可能です。
加齢黄斑変性の治療
治療法は主に二つで、光に感受性のある物質を点滴注射して黄斑部専門の弱いレーザーを照射する光線力学的療法(PDT)と新生血管の発育因子を抑える薬剤を眼球に注射する抗VEGF療法があります。しかし萎縮型のタイプには、積極的な治療法はなく経過観察となります。
抗血管新生療法
体内には新生血管の成長を促すVEGF(血管内皮増殖因子)という蛋白質があり、抗血管新生療法ではこのVEGFを抑制する抗VEGF薬を眼内に注射します。外来で行うことができる治療ですが、消毒して清潔な状態で手術のような治療となります。点眼麻酔をするので痛みはほとんどありません。
注射回数は、初めの3か月の毎月連続3回の注射が基本となり、その後は、その方の病型タイプや病変の活動性によって変わります。治療継続によって進行防止になることも多いです。
光線力学的療法
上記の抗血管新生療法が普及する前に一般に行われていた治療法です。現在は単独でこの治療法を選択されることは稀で、抗血管新生療法との併用で行うことが選択される場合があります。
光感受性物質(ベルテポルフィン)を静脈注射した後に、病変範囲に弱いレーザーを照射する治療法ですが、その薬剤物質が体内に残るので治療後5日間は直射日光を避けた生活をする必要があります。
当院では設備を設けていないので、治療対応ができる病院施設へ紹介となります。
レーザー光凝固術
レーザー光凝固術は、レーザー照射して新生血管を焼きつぶす治療法で、従来から行われてきた治療法ですが、レーザー照射した部位の組織破壊性が高いために暗点(医原性暗点)を生じるので、新生血管が中心窩外へと離れている場合にのみ適応となります。
サプリメント
加齢黄斑変性の前駆病変の患者様への推奨とされています。
<抗酸化物質+亜鉛+ルテイン+ゼアキサンチン>のサプリメント*が推奨されています。
米国でのAREDSという、プラセボ群を対照とした大規模な無作為試験にて、 抗酸化物質(ビタミンC /500mg、ビタミンE /400IU、βカロテン/15mg)+亜鉛(酸化亜鉛/80mg)群が有意に滲出型加齢黄斑変性や萎縮型加齢黄斑変性への進行が抑制されたことが明らかになりました。
その後の同様な試験にて、ルテインやゼアキサンチンなどの黄斑色素の効果も示唆されました。
βカロテンは喫煙者の肺がん発症率が高いことから、喫煙者の方にはβカロテンを除いた、 <抗酸化物質+亜鉛+ルテイン+ゼアキサンチン>のサプリメントが推奨されるようになっています。
*当院にもお取り扱いしております。